恐竜の謎を解く鍵はワニにある
バイオ部門 大塚蓮
恐竜研究は化石の分析を中心に進められてきた。しかし、高校生研究者・大塚さんは、異なるアプローチでその謎に挑んでいる。それは、恐竜と近縁関係にありながら、現代を生き抜いている「ワニ」の身体に、進化の答えを探すという独自の試みだ。本インタビューでは、小学5年生で鶏の骨格標本づくりやワニの解剖を経験したことをきっかけに研究を始め、博物館の収蔵庫を巡りながら独自に標本測定を続けてきた大塚さんに話を伺った。ワニから恐竜へと迫るその発想の原点と、将来への展望を聞いた。
──現在取り組んでいる研究テーマについて教えてください。
ワニの骨格や生態の進化の傾向から、恐竜の生息環境や生態を考察する研究を行っています。特に現在は、ワニの歩行様式に注目して研究しています。歩き方の進化を辿ることで、恐竜がどのように歩き、どのような環境で生きていたのかを考察できるのではないかと考えています。
──研究を始めたきっかけは何ですか?
小さい頃から恐竜や生物が大好きで、図鑑を読んだり博物館に通ったりしていました。小学生の時に、フライドチキンの骨から鶏の骨格標本を作ったことで、骨や進化に対するおもしろさを感じるようになりました。そんな中、博物館の研究者の方から「ワニを解剖してみないか」と提案されたんです。小学5年生で初めてワニを解剖したとき、筋肉や骨のつき方に一切無駄がなく、すべてに意味があることに強い衝撃を受けました。例えば、よく動かす部位は骨が大きく発達しています。骨には進化の過程が刻まれていると感じ、「恐竜に近縁なワニを深く知ることができれば、恐竜のことも見えてくるのではないか」と考えるようになり、この研究を始めました。
──どのように研究を行ってきましたか?
大学の研究室に所属していたわけではなく、ほとんど一人で進めてきました。自分で博物館に電話をかけ、標本を測らせてもらえないかお願いして回りました。博物館に展示されている標本は実はほんの一部で、本当に研究価値のある標本は「収蔵庫」と呼ばれるバックヤードに保管されています。そこにある標本を測定させていただきながら研究を進めてきました。1つの博物館では限界があるため、複数の博物館を訪ね、これまでに19体分の標本を実際に測定しました。基本的に研究は一人で進めてはいますが、行く先々で出会う先生方や有識者の方々に質問したり、アドバイスをいただいて、研究に活かしています。
──小学生で博物館に連絡を取るというのは、かなり行動力が必要だったのではないですか?
そうかもしれません。でも、どうしても研究を進めたかったんです。両親はやりたいことを応援してくれるタイプで、活動を支えてくれました。ここまで続けてこられたのは、そのサポートがあったからだと思っています。
──現在、特に力を入れているテーマは何ですか?
ワニの歩行様式です。歩き方の進化を調べることで、恐竜の進化の過程を読み解こうとしています。ただ、飼育環境下のワニはほとんど歩きません。動かなくても餌がもらえると理解しているからです。そのため、歩行の研究が非常に難しいという課題があります。
──その課題をどのように解決しますか?
将来的には、ワニが自生している地域、特にアメリカなどで研究を行いたいと考えています。自然環境での歩行を観察することで、より正確なデータが得られるはずです。また、アメリカは恐竜やワニの化石が多く発掘される土地でもあり、研究材料の面でも非常に魅力的です。
──将来の目標や、この研究の最終目標を教えてください
ワニの骨格標本をもとに制作しているロボットを、将来的に機械技術へ応用したいと考えています。生物の無駄のない構造は、工学的にも大きなヒントになります。そして、その技術を宇宙開発にも活かしたいです。実は恐竜と同じくらい宇宙も好きで、宇宙飛行士になることも夢の一つです。また、研究を続ける中で、異分野の人との対話から多くのインスピレーションを得てきました。自分の分野と違う視点こそが、研究を広げてくれると感じています。
──最後に、中高生の皆さんへのメッセージをお願いします。
「遠いから無理」を理由にしないでほしい、ということです。僕も、子どもの頃は恐竜の研究は難しいと感じていました。でもワニを調べることで、恐竜に近づく道を見つけました。自分なりのアプローチを見つければ、夢には確実に近づけると思います。そして、自分の分野と違う人の話をたくさん聞いてほしいです。その視点が、思いがけないヒントをくれることがあります。
(文・鷲足祐香)