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孤独をつなぐロボットをつくる ― 分身ロボットからAIコンパニオンへ

AI・数理部門 篠部虹人

少子高齢化が進む日本では、入院や施設入所といった環境の中で、人との関わりが制限され、孤独や不安を抱える人が増えている。こうした課題に対し、近年はロボットやAIといったテクノロジーを活用し、人と人とのつながりを補完する「コミュニケーション支援」の研究が注目されている。本インタビューでは、幼少期からロボットや電子工作に親しみ、高校時代には「分身ロボット」という発想を形にするなど、様々な形でコミュニケーションテクノロジーに向き合ってきた大学生、篠部さんに話を伺った。

 

──現在取り組んでいる研究テーマについて教えてください

現在は、自然会話から早期の認知症の予兆を検知するAIコンパニオンロボットの開発を行っています。もともとは振動を使った研究も並行して進めていましたが、次第にこちらのテーマがメインになってきました。現在はプログラミングも含め、二人で共同研究として進めています。

 

──これまでには、どのような研究を行ってきたのでしょうか?

以前は、小児科の子どもたち向けに、情動を換気するための振動型コミュニケーションデバイスを開発していました。振動フィードバックを用いた、いわゆるフィジットデバイスの分野です。また、入院患者や患児向けのコミュニケーション支援ロボットの開発にも取り組んできました。

 

──研究やロボット開発を始めたきっかけを教えてください

本格的に研究を始めたのは高校1年生の頃ですが、その少し前に、親友のお母さんが脊椎の進行性がんで長期入院されることがありました。「母親として家にいられないことがつらい」という話を聞き、当時ロボットや電子工作が好きだった僕は、「身体は病院にあっても、分身ロボットがあれば家族と一緒にいられるのではないか」と考えました。それがすべての原点です。

 

──そこから、実際にどのようなロボットを作られたのでしょうか?

最初に作ったのは、クマ型の分身ロボットです。カメラとサーボモーターを搭載し、タブレットなどから遠隔操作ができる仕組みでした。首を振ったり、腕を動かしたりすることで、家族の会話にリアクションできるような設計です。完成度は高くなかったですが、「テレポートする存在」としての形を初めて実装できました。

 

──このロボット開発は、どのような環境で進めていたのですか?

高校時代は、学校のグループ研究や外部プログラムではなく、完全に個人で進めていました。住んでいた地域がかなり田舎で、研究やロボット開発の情報に触れる機会がほとんどなかったため、「自分で作るしかない」という環境だったと思います。

 

──研究を続ける中で、原動力になっているものは何でしょうか?

ものづくりは、一人で完結してしまうと意味がないと思っています。誰かに使ってもらったり、誰かの課題を解決できたときに、初めて「やっていてよかった」と実感できる。その感覚を初めて得られたのが、この分身ロボットの経験でした。

 

──最終的に目指しているゴールを教えてください

自分の軸は一貫してコミュニケーションテクノロジーです。ロボットやデバイスを通して、入院環境や入所環境にある「寂しさ」や「孤立」を解消することが、自分にとって一番大きなゴールです。子どもから高齢者まで、幅広い世代に届けたいと考えています。

 

──最後に、中高生へのメッセージをお願いします

開発を通じて、ずっと大切にしている言葉があります。それが、「武器は走りながら拾え」です。最初からすべてのスキルを揃えようとしなくていい。走りながら学び、武器を拾っていくことで、自分にない武器を持った仲間と必ず出会えると思っています。

 

(文・鷲足祐香)