分子構造に基づくドラッグ・ロス優先度評価モデルの構築
複合フロンティア部門 荒木 嘉維
科学で未来を拓く ~ Innovator in the Making
実現したい世界・目標
私は、科学の力で社会課題を解決し、「命の格差」をなくすことを志しています。パンデミック下では、優れたワクチンや治療法が存在していても、国や地域によってアクセスに大きな差が生じました。その現実に触れ、科学は発見するだけでなく、必要な人へ届けてこそ価値を持つと実感しました。私は研究成果を社会に実装する仕組みづくりにも挑戦し、誰もが最新の医療を受けられる持続可能で公平な社会の実現に貢献したいと考えています。
これまで取り組んできた研究
私の研究の原点は、「なぜこの分子は効くのか」という問いです。九州大学QFC-SPでは、セレン含有有機化合物を用いたCOVID-19治療薬候補の合成研究に取り組みました。その中で、わずかな分子構造の違いが薬効に大きな差を生むことを経験し、その理由を理論的に理解したいと考えるようになりました。
そこで、量子化学計算を用いて電子状態(ESP等)と薬効との関係を解析する研究へ発展させ、分子構造と機能の関係を探究してきました。また、NYAS Junior AcademyではQFCで培ったセレン化合物の知識を用いて、多国籍チームのリーダーとして、セレンを活用した太陽光発電システムによるワクチン保管支援プロジェクトに取り組み、科学と社会実装を結びつける視点を培いました。
活動実績
・第62回化学関連支部合同九州大会 優秀賞
・Asia Science Camp 2025(タイ)日本代表派遣メンバー
・博士課程学生・若手研究者向けセミナー 招待講演
・Future Scientists Network(FSN)創設
今後取り組む研究・ADvance Labで達成したいこと
ADvance Labでは、有機合成で培った化学的視点と、量子化学計算・化学情報学(RDKit)・構造生物学(AutoDock Vina)を融合し、ドラッグ・ロス問題の解決に挑戦します。
具体的には、海外で承認されながら日本では利用できない医薬品について、分子構造の独自性や生物学的選択性を定量評価し、「どの薬を優先的に導入すべきか」を判断する創薬インフォマティクスモデルを構築します。
ADvance Labの多様な研究者との議論を通じてモデルを磨き上げ、研究成果を政策や医療の意思決定に活用できる形へ発展させることで、日本のドラッグ・ロス解消、そして将来的には世界の医療アクセス格差の縮小に貢献したいと考えています。