研究と社会の懸け橋を目指して
バイオ部門 齋藤 美月
齋藤さんは高校1年で研究を始め、国立理化学研究所での研究経験なども経て脳神経科学の研究者になることを目指す大学生だ。これからADvance Lab研究員としても研究を続け、障がいに関する謎を解明していきたいと語る齋藤さんに、研究に対する想いの変遷と今後実現したい世界について聞いた。
「研究」という選択肢との出会い
齋藤さんは高校1年生の時、当時流行していたコロナウイルスの研究にチャレンジしてみないかと高校に非常勤で来ていた教授に誘われ初めて研究に触れた。研究ではデータ処理を行ったところ良い結果が出たので論文を書くことになり、高校2年生の時に自分が携わった論文が掲載されたという。「研究を始めた当初はすごく地味だなと思っていたのですが、その後掲載された論文に世界中の研究者やお医者さんがアクセスしているのを見て、こんな風に社会と繋がる方法があったのかとハッとさせられました」。これを機に齋藤さんの目の前に「研究」という新たな選択肢が広がった。
理研での研究経験が開く新たな世界
これまで想像もしていなかった「研究者」としての道。研究プロセスを経験したことにより開けた新たな世界の前で、以前から興味のあった脳科学の分野に立ち返ってみた時、齋藤さんは高校生でも本格的なレベルで脳の研究をできる可能性があるかもしれないと思い立った。早速、国内でも高度な脳の研究が行われている国立理化学研究所(理研)に教授の紹介の元連絡をとってみるとすぐに返事があったという。以降、齋藤さんは理研に通い詰め、研究室のポスドク生について回ることで研究を手伝いつつ脳科学の理解を深めていった。そうした地道な努力を半年ほど続けていると、次第に自分で神経細胞のデータを集めて分析したり図表を作ったりすることが出来るようになり、自分の研究へと発展していったという。
研究と社会をつなぐ橋渡し役としての使命
脳科学の研究を進める齋藤さんに今後の目標を聞いた。「まずは障がいを持っている子どもたちひとりひとりに合った教育がされる社会を作っていきたいです。今はまだまだ研究の進んでいない障がいがたくさんあり、お医者さんも患者さんや家族に説明できないというのが現状です。そのため、脳の障がいへの影響を研究を通して解明することに貢献したいと思っています」。さらに齋藤さんは、研究を突き詰めるだけでなく研究と社会を繋げる橋渡し役にもなっていきたいと語る。「謎を解明するだけが研究者の役割ではない」という発見をしたのは高校時代、国際学会に参加した時だ。研究を始めた当初は研究者といえば毎日部屋にこもって研究しているイメージがあったという。だが、実際に学会で出会った研究者の中に病院や患者と直接つながってニーズを聞いたうえで研究している人が多かったことに衝撃を受け、研究者に対する見方や価値観が一新された。脳神経科学の研究者として研究と社会の橋渡しを目指す齋藤さんの挑戦は始まったばかりだ。
(文・ADvance Lab 立崎 乃衣)