祖母の病をきっかけに描く「健康を当たり前にする世界」
バイオ部門 江川陸翔
「新しい知見で人々を救いたい」と語り、今では複数の研究プロジェクトを力強く進める広尾学園高等学校の江川陸翔さん。研究のきっかけは、祖母がインスリン注射をする様子を見たことだったといいます。今の研究に至るまでの経緯や向き合い方、今後の目標など、活動の源泉を探りました。
研究を始めたきっかけを教えてください
中学生の頃から「人を救える存在」に憧れ、医療に興味を持っていました。糖尿病に関する研究を始めたきっかけは、高校1年生の時に祖母がインスリンを注射するのを見て、祖母が糖尿病とその合併症の糖尿病性神経障害であると知ったことです。糖尿病性神経障害は手足のしびれや痛みを引き起こし、重い場合だと足の切断に至ることもある病気で、根本的な治療法はまだ確立していません。そんな病気を家族が患<わずら>っていることを知り、「悪化する前に止めたい」という思いから、糖尿病や合併症についての勉強や研究を始めました。
どのように研究を進めてきましたか?
今私は千葉大学の研究室で、2型糖尿病に関わる「PGC-1α」という因子が細胞に与える影響を研究しています。研究室探しに難航したり、1ヶ月かけて培養した細胞が死んでしまったりと大変なこともたくさんありましたが、「研究を通じて、新しい知見で人々を救いたい」という思いを原動力に研究を続けてきました。研究を進める中で、仮説と一致する結果が出た時はとても大きな喜びを感じました。私はこの経験から、興味関心や想いを原動力にまずは行動に移すこと、そして原動力を忘れずに研究を続けることの重要性を学びました。
11月までは、合成生物学の国際大会「iGEM2025」に向けて、抗アレルギー成分「ナリルチン」を酵母で人工的に作ることで、花粉症の新たな治療薬を提案する研究プロジェクトを主導していました。このプロジェクトでは、ただ開発するだけでなく、患者さんに安全性を説明し、納得してもらうことの重要性を実感しました。
これからの目標は何ですか?
複数の研究で一貫して目指しているのは、「健康を当たり前にする世界」を創ることです。私は高校1年生まで、身近な祖母の罹患に気づいていなかったため、病気の“気づきにくさ”を実感した経験から、将来は臨床医あるいは研究医として、予防医療の発展に寄与したいと考えています。具体的にはまず、マウスとラットと人間の神経組織データを比較し、手足のしびれなどを引き起こす糖尿病性神経障害の発症原因を探る研究に特に力を入れて、進めていきます。
(文・ADvance Lab 甲斐晴奈)