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[学会参加報告] 研究員が日本植物学会高校生部門で発表&受賞!

1期生の小松和滉さんが第89回日本植物学会で大会長賞を受賞しました。

今回は小松さんに日本植物学会に参加した感想と学んだことを伺いました。


はじめに2025年9月18日から20日にかけて福岡国際会議場で開催された第89回日本植物学会に高校生ポスター部門で参加してきました。結果として大会長賞をいただくことができ、研究者としての大きな一歩を踏み出すことができた貴重な経験となりました。今回はその体験を振り返り、同じく研究に取り組む高校生や、学会参加を考えている方々に向けて報告いたします。

学会の雰囲気と全体的な印象福岡国際会議場に到着して最初に感じたのは、その圧倒的な活気でした。大学院生から著名な研究者まで、本当に多くの方々が参加されており、会場のあちこちでポスターを前にした熱い議論が交わされていました。特に印象的だったのは、私が研究している植物のストレス応答に関する発表が例年より多く見られたことです。これは現在の植物学界における注目度の高さを物語っており、自分の研究テーマの選択に改めて確信を持つことができました。

発表タイトル:「オジギソウの刺激特異的馴化メカニズム」今回私が発表したのは「オジギソウ (Mimosa Pudica L.) における刺激特異的馴化メカニズムの生理学的解明」というテーマでした。オジギソウといえば、触れると葉を閉じる「就眠運動」で有名ですが、実は繰り返し刺激を与えると次第に反応しなくなる「馴化」という現象があります。この馴化が刺激の種類によってどのように異なるのか、そのメカニズムを生理学的に解明することを目指した研究です。

ディスカッションに関して発表当日、予想をはるかに超える反響がありました。ポスターセッションが始まると、次から次へと研究者の方々や学生さんが私のポスターを訪れてくださり、気がつけば4時間近く、文字通り飲まず食わずで議論を続けていました。今でも喉の痛みが残っているほどです。大学院生からは実験手法の詳細について鋭い質問をいただき、教授陣からは研究の発展性や応用可能性について示唆に富んだアドバイスをいただきました。中でも印象的だったのは、異なる分野の研究者から「この現象は他の植物でも見られるのか」「環境ストレス応答の観点からどう捉えるか」といった、自分では思いつかなかった視点からの質問でした。

新たなつながりと今後の展望学会参加の大きな収穫の一つは、新しい人的ネットワークの構築でした。以前からお話ししたいと思っていた埼玉大学の研究者の方と実際にお会いすることができ、今後オンラインでのミーティングも予定しています。また、普段お世話になっている先生方や研究室のメンバーとも、食事を通じてより深い関係を築くことができました。研究面では、今回いただいた様々な指摘やアドバイスを参考に、オジギソウの馴化メカニズム解明に向けてさらに研究を発展させていく計画です。特に、分子レベルでのメカニズム解析や、他の植物種との比較研究など、新たな方向性も見えてきました。

高校生研究者へのメッセージ今回の経験を通じて強く感じたのは、年齢に関係なく、真摯に研究に取り組んでいれば、多くの研究者の方々が対等に議論してくださるということです。最初は「高校生の自分が本当に参加していいのだろうか」という不安もありましたが、蓋を開けてみれば、皆さん私の研究内容そのものに興味を持って、建設的な議論をしてくださいました。研究に取り組んでいる高校生の皆さんには、ぜひ積極的に学会参加を検討していただきたいと思います。確かに緊張はしますが、それ以上に得られるものは計り知れません。自分の研究を客観視する機会になりますし、何より研究者コミュニティの一員として認められる実感を得ることができます。

おわりに第89回日本植物学会での経験は、私にとって研究者としての大きな転換点となりました。大会長賞という名誉ある賞をいただけたことはもちろん嬉しいですが、それ以上に、多くの研究者の方々との出会いと議論から得られた知見や刺激は、今後の研究活動の大きな原動力となるでしょう。オジギソウの小さな葉の動きから始まった研究が、こうして多くの方々に興味を持っていただけたことに深い感謝の気持ちでいっぱいです。今後も初心を忘れず、植物の持つ巧妙なメカニズムの解明に向けて、研究を続けていきたいと思います。